1983年10月7日、私の誕生日にオープンした『きりきりぶらうん』は、
20年と9ヶ月の長きに渡り営業してきましたが、
諸事情のために、先月をもちまして閉店いたしました。
思い返せば19歳の頃、あてもない旅行先の京都、
四条河原町にあった「BALビル」の中の喫茶店で、
「俺は30歳までに絶対にお店を持つ」と親友と
夢を語り合った事が店をオープンするきっかけでした。

当時はレコーディングが続いていて割と裕福でしたので、そのお金を貯めて
資本金にして、ちょうど30歳の誕生日に店をオープンすることが出来ました。
店の名称『きりきりぶらうん』は、当時飼っていた猫(きりきり:KITTY
KI
TTY)と、犬(ぶらうん:BROWN)から付けたものです。
新しい店舗だったために、コンクリートの打ちっぱなしでした。
当時生徒だった岡安芳明や田邊充邦らが、きりきりの壁を塗り、
また大勢の友人らが手伝ってくれました。
予定では私と妻、そしてスタッフで店を切り盛りするつもりでいたのですが、
オープンして間もなく、妻が妊娠しました。
23歳で結婚してから7年間は子供を作りませんでしたが、
年上の妻の年齢のことも考えると、どうやら年貢の納め時でした。
私の演奏活動が日に日に忙しさを増して、店にあまり出られなくなり、
妻も出られなくなるので、レギュラー・スタッフを定着させる必要がありました。
現在、フラメンコとジャズの融合という、独自のギターで人気を博している
高木潤一は、きりきりの初めてのスタッフとして厨房を任されました。
当時18歳でした。
また沖縄のコンサートの時に客で来ていたアキラ・スチュアートも、
歌の勉強を兼ねてきりきりに住み込みで働き、店を助けてくれました。
私が九州に楽旅に出ている時に長女の礼子が生まれ、
真っ先に報告をしてくれたのも彼でした。
(礼子は今年20歳です。)
彼はその後、FM『J・WAVE』のテーマなどを歌って活躍しましたが、
最近はどうしているのでしょうか。。。
今年の夏、宇部のコンサートで師弟共演する山口在住のギターリスト、
山下正も、きりきりのスタッフとして長年手伝ってくれました。
(8月1日 宇部・湖水ホール)
忘れてならないきりきりの重要なスタッフは、かつての店長松田裕子です。
一番苦しい時期に、強力な助っ人としてきりきりを支えてくれました。
きりきりは彼女のお陰で、このように長い間営業する事が出来たのです。
きっと今頃ハワイで幸せになってくれていることと思います。
このように大勢の心強いスタッフに恵まれました。
狭い店ながら、私の職業柄、訪れるミュージシャンは日本人だけでなく、
ジミー・スミス(org)やドクター・ロニー・スミス(org)も来てくれました。
また場所柄漫画家も多く、猿渡哲也や小道迷子、また坂上アキラなどは常連でした。
芥川賞作家の奥泉光は、フルートを持って来て飛び入りで演奏に参加したりもしました。
お店を持つ事の特典は、何と言っても「人との交流」でしょう。
色々な人と素晴らしい出会いがありました。
これとは対照的に、難しい点は経営に伴う金銭面の問題です。
きりきりも類にもれず、世の中の不況の影響をもろに受けました。
とりわけ近年における大不況の風は、きりきりのような小店舗から
真っ先に影響を受けます。
加えて、国分寺の街の風紀の悪化も経営を難しくしています。
客の一人が「駅からきりきりに来る途中で、何人もの客引きに誘われた」
と言っていました。
この発言は、私がきりきりを閉店する気持ちにさせる発端となりました。
確かにきりきりに来る道の両側を、風俗の客引きの黒服が大勢立っています。
ある本が「今は対処しにくい危機の時代」と述べているのもうなずけます。
以上のような理由で止む無く閉店することになりましたが、
様々な思い出が、まるで走馬灯のように私の頭の中を駆け巡ります。
最後となった6月のきりきりライブは店を偲ぶ大勢のお客様に囲まれ、
どれも超満員で、思い出深く印象に残っています。
そのラストライブをご紹介します。
| #1 |
6月5日(土) |
《宮之上ジャズギター道場アンサンブル+1》 |
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宮之上貴昭 昆真樹 浅見和寿 中村紘崇 以上g
伊東里栄子b 太田耕平ds ゲスト:中溝裕美voc |
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| #2 |
6月11日(金) |
《渡邉祐美子トリオ+1》 |
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渡邉祐美子p 本川悠平b 内野香織as ゲスト:宮之上貴昭g |
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| #3 |
6月12日(土) |
《ブルージー・オルガン・ナイト》 |
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宮之上貴昭g 宇多慶記org 太田耕平ds ゲスト:大野めぐみvoc |
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| #4 |
6月18日(金) |
《金子亜里紗トリオ+1》 |
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金子亜里紗p 浅見和寿g 三浦哲夫b ゲスト:宮之上貴昭g |
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| #5 |
6月19日(土) |
《 法田&宮之上 ギター・バトル》 |
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法田勇虫g 宮之上貴昭g 山口雄三b 太田耕平ds |
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| #6 |
6月25日(金) |
《鳥尾さん+1》 |
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中島弘恵p 伊東里栄子b 安永春美p ゲスト:宮之上貴昭g |
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| #7 |
6月26日(土) |
《SMOKIN' グランド・フィナーレ》 |
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宮之上貴昭g 岡淳ts 吉岡秀晃p 伊東里栄子b 太田耕平ds |
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現在、きりきりぶらうんを取り壊し中です。
次に入るお店がすでに決まっていますので、 7月15日までに完全に元の状態に戻さなければいけません。
昨夜、椅子やテーブルなど、家で使う大きな荷物を運びました。
ピアノは渡邉祐美子が持っていってありません。
店はすでにガラ〜ンとしています。
いろいろな思い出が蘇ってきました。
入り口のドアーから後ろの壁まで歩いてみました。
なんとたった10歩しかありませんでした。
このたった10歩の空間に、「愛」「喜び」「楽しさ」「出会い」「別れ」
「悲しみ」「口論」「緊張」が存在したのです。
長きに渡り『きりきりぶらうん』を愛してくださったお客様、ミュージシャンの皆様、
そしてスタッフの皆様、本当にありがとうございました。
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